第六回年会チュートリアル1

From Japanese society for quantitative biology

第六回年会 (チュートリアル1)顕微鏡と画像解析

10:00-11:00 光学顕微鏡の多様性

  • 講演者:藤田 克昌(大阪大学)

光学顕微鏡の大きな魅力はその多様さにあると思います。明視野顕微鏡、暗視野顕微鏡、蛍光顕微鏡、位相差顕微鏡と様々な顕微鏡が使われていますが、この多様性は光学現象の多様性に起因しています。物質に照射された光は、吸収されたり、散乱されたり、その物質をすり抜けたりします。また物質にエネルギーを与えて、その物質が発光したりもします。さらに、光は様々な波長をもっていて、波長毎によって異なる光学現象が現れます。このため、異なる様式の顕微鏡を用いると、たとえ同じ試料を観察しても、全く異なる世界が目の前に現れます。本講演では、まず、各種顕微鏡がどのような情報を基に画像を構築しているかを紹介し、顕微鏡の多様性を理解していただこうと思います。

また、最近では、光学現象の多様性を生かして、光学顕微鏡を単なる形態観察の道具としてだけではなく、試料が含む物質の分析も同時に行おうという試みが多くなされています。その中でも最近注目されているのがラマン散乱顕微鏡という、試料の分子振動を基に観察像を構築する顕微鏡です。ラマン散乱を利用した顕微鏡といっても多くの種類があり、それらの観察原理と特徴について紹介します。これらの技術の生物学への応用についてはまだまだ進んでおらず、その可能性について皆様と議論ができればと思います。

画像情報学と最適化

  • 内田 誠一(九州大学)

昨年のチュートリアル(「画像情報学研究者は何をやっているのか?」,スライドはこちら→ q-bio.jp/images/8/81/ImageProcessing05.pdf‎ )に引き続き,定量生物学と密接な関係のある「画像情報学」に関するチュートリアルです.前回は,標本化やフィルタなど,非常に基礎的な事項を駆け足で説明しました.今回は,前回よりも応用的な技術,例えば,対象追跡,領域分割,パターン分類を中心に紹介します.これら技術については,特に「数理最適化」と密接に関連しています.最適化とは,「なんらかの評価関数f(x)を最大化もしくは最小化する変数xを探索する技術」です.卑近な例では,経路をxとして,東京から大阪までの移動料金f(x)を最小するのも,最適化の一種です.一見,画像情報学とは関係なさそうですが,様々な画像処理は最適化の問題として定式化され,様々な最適化技術により解かれています.


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